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傾斜計における無線通信の違いによるメリット・デメリット

2025.02.04

IoT技術解説


無線式の傾斜計は、土木・建築などの建設現場や地盤モニタリング、橋梁の状態監視など、幅広い分野で活用されていますが、使用される無線の種類によって特性や性能が大きく変わります。本ブログでは、無線式傾斜計に見る無線通信の違いと、それぞれのメリット・デメリットについて詳しく解説します。


1.シングルホップ型とマルチホップ型

無線のタイプは大きく分けて「シングルホップ(スター型)」と「マルチホップ(ツリー型、メッシュ型)」の2つに分類されます。それぞれの特徴を見ていきましょう。


【シングルホップ(スター型)】

● 子機である各傾斜計が、直接親機や基地局と通信を行う方式です。例えば、スマホの通信でお馴染みのLTE/5G、Wi-FiやIoT無線として有名なLoRaWANなどがシングルホップ型となります。

● シングルホップ型のメリットは
○ LoRaWANにおいてはシステム構成がシンプルで安価です。また低頻度収集で長期の電池駆動が可能です。
デメリットは
○ 親機と子機間の通信が届かない場合の延伸手段がない。
○ 特に親機と子機の間に障害物があると通信が途切れることある。傾斜計の場合、H鋼や重機などの建材や、山や地面そのものが障害となり通信できないことがある。
などです。


【マルチホップ(ツリー型、メッシュ型)】

● データが複数の中継デバイスを経由して伝送される方式です。例えば、Wi-SUNはルーティング型のマルチホップ通信を使用する代表例です。ソナスのUNISONetもマルチホップ型です。

● マルチホップのメリットは
○ 中継動作により通信範囲を広げることが可能で、広大なフィールドや、高層、地下、トンネル内でも傾斜計を使用することができます。
デメリットは
○ ルーティング型においては、通信経路が途絶えた際の再構築が必要で、その間のデータ欠損が発生します。ソナスのUNISONetは非ルーティング型に分類されます。

●  ルーティング型か非ルーティング型か
○ ルーティング型とは、通信経路を決めて通信を行う方式です。
○ 非ルーティング型とは、通信経路を決めずに通信を行う方式で、ソナスのUNISONetでは「同時送信フラッディング」という方式などでメッシュ型ネットワークを構築し、ネットワーク内の全リンクを使用した簡素かつ堅牢で柔軟性のあるネットワークを実現しています。
○ 非ルーティング型マルチホップのメリットは
■ ネットワーク上の通信経路の一部に遮蔽物が発生した際も別の経路を用いてネットワークを維持し引き続き通信を行うことが可能です。



2.基地局型か自営網型か

無線は、基地局型か否かによっても分類されます。

基地局型
● 通信を行うために通信事業者などが設置した基地局を使用する方式です。例えば、LTE/5Gを使用するスマホなどをイメージすると分かりやすいでしょう。傾斜計においてはLTE/4GまたはSigfoxというIoT無線を用いることがあります。

● 基地局型のメリットは
○ 広域通信やインターネット接続が容易で、安定性が高い。
○ ユーザーが基地局となる親機を用意する必要がない。
デメリットは
○ 通信事業者が用意した基地局のサービスエリア圏外においては、子機である傾斜計などのデバイスが使えない。例えば、高層ビルの建設現場、トンネル内、地下、山地などが該当します。
○ LTEや4Gを用いる傾斜計の場合、消費電力が高いため、傾斜計を長期間動かす場合には、有線電源や大型のバッテリーを準備する必要があります。


自営網型
● ユーザが親機を用意し子機とセットで使用するシステムで例えば、Wi-Fiが該当します。UNISONetも自営網型に分類されます。

● 自営網型のメリットは
○ 独立した環境での運用が可能で、特定のエリア内での利用に適しています。子機である傾斜計などのデバイスは、高層、トンネル内、地下、山地などの僻地でも使用することが出来ます。
デメリットは
○ 親機が必要のため、その分のコストが発生します。


本稿では傾斜計における無線通信の違いを解説しました。
どの無線方式にもメリット・デメリットが存在するため、傾斜計の使用される環境やかけられるコスト等に合わせて、適切な無線通信を選択する必要があります。

ソナスでは、お客様の環境に合わせた通信方式のアドバイスが可能です。無線通信の選択に悩んだ際にはぜひご相談いただければと思います。