アプリケーションノート

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SONAS-APN-X-0003

無線式微動計による常時微動モニタリング: 加速度データからのμmレベルの変位波形算出

同期計測 建築 常時微動 スポット計測

構造物の健全性モニタリングにおいて、常時微動変位は構造状態を直接的に反映する重要指標です。加速度記録からの変位算出については多くの手法が提案されていますが、現場での高精度なデータ取得には課題がありました。「Sonas x04 Pro Portable」は、従来の複雑かつ大掛かりなシステムを必要とせず、極微小な常時微動を無線で手軽かつ高精度に捉えることができます。本アプリケーションノートでは、複数の建築構造物にて本機を用いた加速度計測を実施し、ノイズに埋もれがちな振幅5~20μmオーダーの微細な変位波形を明瞭に抽出・算出した事例を紹介します。

キーワード
常時微動、変位、積分変位、加速度センサ、振動計測、固有振動数、無線、構造モニタリング

システム説明

本システムでは、親機である1台のベースユニットと、子機である複数台の微動計(センサユニット、図1)から構成される。 ベースユニットはWindows PCに接続してUSB電源で駆動し、微動計の時刻同期や計測状態などを管理し、PCで状態を可視化する。微動計は内蔵電池で駆動し、無線ネットワーク内において高精度に時刻同期した計測を行なうことができる。計測したデータはタイムスタンプとともに全てユニット内のSDカードに記録を行う。微動計の計測性能と設定を表1に示す。

図1:微動計イメージ

表1:計測性能と設定
計測値 3軸重力加速度
端末間時刻同期誤差 30 μ秒以内
ノイズレベル 0.02 μG/√Hz
計測レンジ ±2 G
サンプリング周波数 200 Hz
カットオフ周波数 60 Hz
 

微動計の内蔵センサ

本システムにおいて、微動計はM-A370(図2)を内蔵している。M-A370は、水晶振動子をセンサとして用いる稀有な動作原理を有しており、小型、軽量、低消費電力でありながら、サーボ型加速度計と同等以上に高感度かつ低ノイズ(低周波数帯を含む)、さらに高バイアス安定性を実現することが可能である。  

図2:M-A370のイメージ

(出典:https://corporate.epson/ja/news/2025/250522.html)  

計測概要

集合住宅(28階建て・RC構造・2013年竣工)の19階、および周囲からの振動が比較的入りいくい大学キャンパス内の建物の半地下にて計測を行った。 微動計は図3のように複数台を並べて設置した。
図3:設置した微動計の様子

計測結果:加速度波形

最大加速度(X軸)
・ 集合住宅19階:1.008mG
・ 建物半地下 :0.186mG  

図4:集合住宅19階で得られらた加速度波形

固有振動数の推定

推定固有振動数
・集合住宅19階:0.6Hz付近
・建物半地下 :0.186Hz付近

図5:集合住宅19階における加速度データのFFT

図6:建物半地下における加速度データのFFT

 

算出結果の変位

加速度からの2階積分として算出した結果により、5~20μm程度の変位を捉えることができた。本システムは計測端末同士で高精度に時刻同期が取れているため、隣接した複数台の微動計から得られた変位においても波形が重なる様子が確認できる。

図7:集合住宅19階における変位波形

図8:建物半地下における変位波形

 

まとめ

本アプリケーションノートでは、Sonas x04 Pro Portableを用いることで、低周波数帯域までの低ノイズな加速度計測を実現し、建物の高層および最下層における常時微動を高精度に計測した事例を紹介した。

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https://smo.kenken.go.jp/~kashima/ja/viewwave

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